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【暮らしを再設計】第1回:キッチンを改善した話

暮らしの中には、「まあ、こんなものか」と諦めて放置している小さなストレスがいくつもある。3Dプリンターなどを使って、その一つひとつを自分の生活に合わせて再設計するのが私の趣味です。このシリーズでは、そうやって解消した「暮らしの小さな不満」を、一つずつ記録していこうと思う。

記念すべき第1回のテーマは、キッチンの排水溝の「ゴミ受け」だ。

地味だけど、地味に困っていたこと

賃貸住まいなので、キッチンの設備は基本的に備え付けのものを使うしかない。排水溝のゴミ受けもその一つで、見た目はごく普通のプラスチック製。水を流すための穴が細かくびっしり空いている、よくあるタイプだ。

備え付けのゴミ受けイメージ。網目が細かく、フィルターとしての性能自体は悪くない。

網目が細かいこと自体は、フィルター性能としては理にかなっている。ただ、自分も含めほとんどの家庭ではゴミ受けネット(不織布の使い捨てネット)を被せて使っていて、生ゴミのキャッチはそのネットが担っていると思う。つまり、このゴミ受け本体の網目がどれだけ細かくても、実用上はほとんど意味を持っていなかった。

それなのに、細かい網目のせいで起きる困りごとだけはしっかり残る。

  • ・細かい溝や穴に汚れがすぐ入り込む
  • ・形状が複雑で、ブラシが届かない部分が多い
  • ・気づけばぬめりやカスがびっしり付着している
  • ・そしてこの状態になると、そもそも掃除する気が起きない

「ネットを被せるなら、本体側の網目を細かくする意味はない。むしろ汚れの温床になっているだけでは」と、ある日ふと思った。毎日使う場所なのに、これはさすがに自分の使い方に設計が合っていない。

だったら、自分で作ってしまおう

賃貸なので排水溝自体を変えることはできないが、ゴミ受けだけなら話は別だ。自分で3Dモデルを設計して、3Dプリンターで出力してしまえばいい。

再設計にあたっては、「清潔さの向上」を一つのゴールに置いて、そこに至る道筋を3段階のコンセプトとして整理した。

1.そもそも汚れを溜めにくくする
どうせネットで濾すので、本体側は太めのリブ(骨組み)だけで水を通す構造にする。汚れが引っかかる隙間そのものを減らして、溜まる汚れの量自体を減らす段階。

2.溜まってしまった汚れも、洗いやすくする
完全には防ぎきれない汚れに対しては、次の砦として「洗いやすさ」で対応する。複雑な溝や死角をなくし、さっと洗い流せる形にする段階。

3.洗っても落ちない汚れは、丸ごとリセットできるようにする
洗浄だけではどうしても追いつかない、樹脂の細かい傷や経年劣化まで含めて清潔さをリセットする最後の段階。ここで効いてくるのが、3Dプリンターで安く量産できるという強みだ。材料費だけで見ると一つあたり50円もかからないので、「もったいないから使い倒す」ではなく、必要なタイミングで気兼ねなく丸ごと交換するという選択ができる。

出力した試作品たち。手前が最終的に採用した完成形で、奥のは数ある試作品の一部。

写真に写っているのは開発過程で作った試作品たちで、リブの太さや本数、高さのバランスを何パターンか試した。最終的に、水はけと洗いやすさ、強度のバランスが一番良かった手前のものを完成品として採用している。

実際の運用:月1交換で衛生面を底上げ

使い方としては、基本は普段どおり洗って繰り返し使う。そのうえで、月に1回程度のペースで新しいものに交換している。

これは「洗うのをさぼっているから交換する」というより、「定期的に新品に入れ替えることで、洗浄だけでは追いつかない部分の衛生面を底上げする」という考え方だ。どれだけ丁寧に洗っても、樹脂の細かい傷や経年劣化までは防げない。そこを、安価に量産できるという3Dプリンターの強みでカバーしている形になる。

使ってみての感想

実際に使い始めてみると、想像していた以上に快適だった。

  • ・リブの隙間が広いので、汚れが表面に乗っているだけの状態になり、さっと洗い流しやすい
  • ・水の通り道自体が大きいので、そもそも詰まりにくい。水切れが悪くなってストレスを感じる場面がなくなった
  • ・ネットとの運用と噛み合っているので、機能的な無駄がない

これまでは細かな隙間にたまった汚れを、必死に掃除するという状態が続いていたのだけど、今はその手間から解放された。

おわりに

今回の件で改めて思ったのは、日用品の小さな不満は、既存の製品をそのまま受け入れるのではなく「自分の使い方に合わせて再設計する」ことで解決できる場合が多いということ。小さな改善でも日々の積み重ねによって大きな利益を得ることができる。仕事でも大事なことですね。

「3DPで暮らしを改善する」シリーズ、第1回はここまで。今後も、誰も教えてくれないけど地味に効く改善を見つけたら、また記録していきたい。


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渡邉龍壱

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