木の匂いか
かすかな表面のざらつきか
それとも視界の端で光を柔らかく跳ね返す質感なのか
自分がその場所に居たいと感じる心地の良さが
五感のどれに落ちてきているのか
本当のところはよくわからない
きっと
名前のつかないいくつもの感覚が重なり合って
静かに胸の奥へ届いているのだと思う
たとえば喫茶店に入るとき
その感覚はとてもわかりやすく立ち現れる
ふと長居したくなってしまう店は
決まって木に囲まれている
使い込まれた木の割れやキズ
完璧さからは遠ざかるけれど
きれいなままでいることのために
この居心地をそっと手放してしまうのは勿体ない
傷ひとつない美しさよりも
使い込まれて馴染んでいった気安さのほうを
私は選んでいたいのだと思う
そんな時間の残した質感のなかに
今日もただ静かに身をゆだねている

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