文豪はどんな景色の中で
言葉を編んでいたのだろう
そんな淡い好奇心に引かれて
私は豊島区にある
鈴木信太郎記念館へと足を運んだ
そこに鎮座していたのは
圧倒的な重厚感を纏った
濃い木の色の本棚だ

けれど
その静穏な空間を鮮やかに裏切るように
小さなステンドグラスから
カラフルな光がこぼれ落ちている

鈴木本人がデザイン案を手掛けたというその硝子は
どこまでも絢爛で
けれどどこか祈りに似た静けさを孕んで
本棚の深い影と鮮烈なコントラストを描いていた
足元を見れば
そこは無機質なコンクリートの構造体
フランス文学者として
彼が蒐集した膨大な稀覯本(きこうぼん)は
一度失えば二度と手に入らない世界の破片
震災や空襲からそれらを
物理的に切り離し
守り抜くため
彼はこの場所を「本のための城塞」として
コンクリートで築いた

1945年
空襲の炎は隣接する木造の母屋を
そして鉄骨造の2階を無慈悲に焼き尽くした
けれど
このコンクリートの書庫だけが
炎の牙を撥ね退けて生き残った
本への執着が
石の冷たさを借りて時を止めた
今もそこにあるのは
燃えなかった言葉たちの
あまりに静かな熱量だ

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2026.3.7(土)~3.15(日)まで
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