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芙美子の部屋

窓の向こうに広がる庭は
静かな呼吸を繰り返している

文豪がどんな場所で
言葉を紡いでいたのか知りたくて
落合の坂を登った

林芙美子記念館
そこには、かつて彼女が
「客人よりも、ここに住むひとの心地よさ」を
最優先に作り上げた
切実で優しい生活の跡があった

驚いたのは書斎の場所
明るすぎるという理由で
彼女はあえて
納戸として設計した薄暗い小部屋に
執筆の場を移したという

光があふれすぎると
言葉は逃げてしまうのだろうか

雪見障子からのやさしい光が
部屋全体をぼんやりと照らしていた

 

庭に面した軒や窓の高さ
その完璧なフォルムに見惚れる

北側に回り込んで
書斎の入り口を見上げたとき
ふっと心がほどけた

戸があまりに低くて
まるでお伽噺に出てくる
小人の家のようだった

偉大な作家である前に
一人の生活者として
彼女が守り抜いた「暮らし」の静謐さが
今もこの家には満ちている

 


 【告知
平屋の住まい:岐阜県可児市
2026.1.10(土)~1.18(日)まで


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吉田武大

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